愛の戦士ヘッドロココ 7
次界への旅は相変わらず続いている。ロココは、ルシファから貰った悪魔王の剣が操れない。
彼らが次に立ち寄った国は、花の国・フローリア。そこで彼らは、悪魔に追われていた小さな天使・ライラを助ける。ロココはライらからフローリアでは悪魔・フロルが天使の長であるフローラを味方につけて国を支配しようとしていると聞かされる。さらにライラは、フロルはフローラが好きかもしれないが、天使に恋をする悪魔は生意気だと切ってすてる。その発言を偶然聞いてしまったマリアは落ち込むが、気を取り直して手作りのシチューをライラに届ける。しかしライラは悪魔の作ったものは信用できないと皿をひっくり返す。と、こぼれたシチューから毒臭が漂う。一同に緊張がはしる。自分が疑われていると勘違いしたマリアはいたたまれずに集団を飛び出す。ロココはライラに「毒は外部のものがいれた」と断言し、彼女を探しに出かける。
カイザーは一人落ち込むマリアのもとに現れ、天魔界へ帰ろうと誘うが、追ってきたロココとマリアの両方にどつかれる。勢いでカイザーの懐から零れ落ちた小瓶が割れて、悪臭を漂わせる。ライラのシチューと同じ臭いで、シチューの毒は彼がロココたちの仲間割れを狙ってカイザーが入れたものだと判明する。
口論を交わすロココ・マリアとカイザーの目下に、悪魔に襲われて燃える町が現れる。マリアとロココはとっさに町を助ける。そこへライラは神帝を伴ってあらわれ、多くの町がその町と同じように襲われているフローリアの惨状を救ってくれと頼む。お人よしな彼らは引き受ける。
一行のもとをそっと離れたカイザーはフロルと会談し、協力関係を結ぶ。フロルは城に魔術で心を変えたフローラを伴っていた。
ロココ、マリア、ライラはフローリアを救うために、フロルの城へ侵入する。一度は悪魔化したフローラの術にはまってしまう。しかし、悪魔化した振りをして城でフロルを倒す機会をうかがっていた天使・グラディの助けで危機を脱する。グラディは、ライラが花を咲かせればフローラの心は元に戻ると話す。しかし、花を咲かせることはライラの死を意味する。
フロルたちに対面した一行だが、ライラは死を恐れて花を咲かせることができない。逆に、フロルに攻撃されグラディが死んでしまう。グラディの死でやっと花を咲かせる決心をしたライラだが、フロルの攻撃は続き、ロココとともに彼の魔の花シールドに閉じ込められてしまった。このシールドは中のものを消滅させてしまう。そして、シールドに入ることは可能でも出ることはできない。苦しむロココを見て、マリアは自らも魔の花の中に飛び込む。力をあわせて抵抗するも、やがて力尽きてしまうふたり。
そのとき、悪魔王の剣が「使え」とばかりに出現した。ロココとマリア、ふたりの手が剣の柄にかかると、ロココひとりでは操れなかった剣が力を取り戻し、魔の花を打ち破ることができた。ひとりではかなえられないこともふたりなら――、それは剣を託したルシファからのメッセージだったかも知れない。
ふたりの行動に感銘をうけたライラが死への恐怖を克服して花を咲かせた。フローラは正気を取り戻しフロルは力を失うが、当のライラは死んでしまう。
フロルは、事情を知って怒るフローラにずっと好きだったと告白する。フローラはフロルを今後十年、薔薇の花に姿を変えてしまうことで罰するが、薔薇には手ずから世話をしてあげるという。ライラは愛のパワーで蕾から蘇り、一件落着して、ロココたちはフローリアを後にする。
ここから、連載は舞台を「ぴょんぴょん」から「ちゃお」に移す。正式な連載タイトルも「ビックリマン愛の戦士ヘッドロココ 天と星の伝説 (レジェンド) 」と変わる。タイトルロゴとしては後半の「天と星〜」が強調されるかたちで、ビックリマンやヘッドロココを前面に押し出すことはしていない。コミックスによれば、主人公がロココからマリアに代わった。ただし、個人的な感覚としては「ぴょんぴょん」時代はロココ・マリアが同格のW主役で、「ちゃお」以降は少しだけマリアに比重が移ったかな、という感じ。主役がどうこういうよりも、絵が変わったという印象をうけた。
フロル、フローラ、ライラ、グラディ……、ほとんどの新キャラがシールからではなくオリジナルのキャラクタである。
この薔薇になるというラストは、いいのか悪いのか、判断がつかない。絵的には美しいが、個人的には完全には納得していない。フローラはフロルにかなり酷いことをされているのではないだろうかと思うのだが (少なくともキスをしようとしているシーンがある)、それでもフローラは許してしまう。もっと怒れよ! (<余計なお世話)  彼女の下した罰は、薔薇になって十年間耐えればいい、その十年はフローラが水をくれるという条件である。しかも、被害者のフローラの側からこれを提案しているわけで、じつは彼女ももともとフロルをにくからず思っていたのかも知れない。日本の刑法によれば、強姦の(ぉ)刑罰が懲役3年以上なので、10年というのは重いのかも知れないが……。しかしその10年がフローラの水やりつきだ。


フローリアを後にしたマリアたちがたどり着いたのは、次界への門だった。くぐれば後戻りは許されない。マリアは母・ノアとの関係に未練を残し、前進をためらう。そんなマリアをカイザーは「 (ノアに大切にされているにも関わらず) わがままだ」と叱った。意志を持った門は「思い残すことがあっては通ることができない」、「思い残す地にゆけ」とカイザーを巻き込んでロココとマリアをワープさせた。
なお、神帝は置き去り……。彼らには思い残すことはなかったということだろうか。カイザーのノアに「わがままだ」という科白は、親を亡くしたからこそのものかなとおもった。
3人が辿りついたのはなぜか天聖界だった。ロココの父・アンジェリックは次界に向かっているはずの彼らを見て驚くが、マリアとロココの話を聞き、ふたりを祝福した。ノアもこんな風に祝福してくれたら――マリアは悩む。
ゼウスのもとに悪魔からノアの訪問を告げる密書が届いた。マリアは罠かもしれないと気をもむが、ゼウスたちは「あなたを育てた人がそんなおろかなはずはない」と断言する。あまりに善人な彼らにマリアは、もしものことがあれば自分がノアを――と隠れて短刀を握った。ロココは、「母上を信じて」とマリアの短刀を砕いた。
約束の時間がきた。カーテンの陰に隠れたマリアとロココが、そして窓の外の物陰からはカイザーが、それぞれ見守る中、ノアはワルキューレの魔女を従えて派手に登場した。その勢いのままノアは告げる。「和平を望みます」
マリアとロココの旅を見守る中で思うところがあったという。マリアは、驚きと喜びでカーテンから飛びだし、ノアに抱きついた。ノアは彼女に「ロココと幸せに」と告げる。
だがすべてが直ぐにうまくいくわけではない。ノアの行動を察知し、裏切りと考えた悪魔たちが天魔界に責めてきた。和平への道が若いマリアたちに受け継がれることを確信しているノアは「殺すなら殺せ」と気丈だった。隠れていたカイザーはノアを守るために姿を現し、ロココも悪魔王の剣で戦う。ノアは夫の剣で戦うロココを感慨深く見守る。
戦いの最中、天聖界に空間の歪みが現れる。ゼウスは空間の歪みは争いから双子星だった天魔界と天聖界が離れたせいだという。ノアは嵐を鎮める方法を知っていると宣言し、マリアを抱きしめた。そして、嵐へと向かっていった。マリアは、父・ルシファが天魔界の嵐を静めるために死んだことに思い至るが、ノアを止めることはできなかった。
ノアは死んだ。彼女は、ロココにマリアと国民たちを託した。天聖界を救うことは双子の天魔界を救うことであり、ルシファが為した逆もまた然りだった。そう考えたマリアは、ふたりが守ったふたつの国を幸せにすると決心した。もはや、ただ好きな人と一緒にいたいと旅をしていた小さなマリアではなかった。
カイザーはロココを悪魔王と呼び、彼らが戻るまで天魔界を守る、と去っていった。
マリアとロココは再び次界への門の前に戻ってきた。神帝たちは彼らを待っていた。そして、皆は未来へと扉をくぐった。
終りです。7巻は「ぴょんぴょん」から「ちゃお」に移行した以降の作品がすべてを占めており、作品としてのパワーは小さい。しかし、連載が打ち切りだった (当時の状況から判断) にしては最終回「門編」は綺麗にまとまっている。上のあらすじではとても書ききれないが、台詞やモノローグが詞的で練れている。最終回はどうしよう、というのがあらかじめ藤井先生のなかにあったのかも知れない。
攻めてくる悪魔軍のなかにスーパーデビルがいない。初期にはスーパーゼウスよりも目立っていた彼だが、いつのまにかロココの血縁ということになれたゼウスと比べて最後は出数で差がついた。あの軍勢はデビル派ではなくノア派だったという見かたもできる。愛の泉編で出てきたデビル軍とはだいぶ見た目が異なる (そもそも絵柄が変わってるとかいうつっこみはなしの方向で)。ノアに忠実だったからこそ、彼女の行動がより強い怒りに結びついたのかも知れない。ノアの臣のなかでは、カイザーは物分りがいい。フローリアの段階でマリアを諦めていたからか、ずっとロココとマリアをつけまわして感化されたせいか、たぶん両方だろう。なお、同じくくっついてきていたはずのワルキューレの魔女たちがどうやってノアのもとに帰ったのかは不明。
デビルの不在はともかく、この最終回でいちばん違和感を感じたのは、マリアが最後の戦闘にいないこと。彼女が対悪魔に攻撃をしているシーンはそもそもあまりないのだが (戦闘に平行して物語を進めるための会話をしているため攻撃シーンが意外と少なくなっているせいもある)、前線にいなかったことはこれまでなかったはずだ。後方でシールドに入って「ロココは無事かしら」なんていっているマリアなんてマリアじゃない。ま、ノアが過保護したのかも。 
ところで……
脱出編(5巻)の最後 アクアーネ編の最後 門編の最後
さあ、
ゆこう
次界へ!

ゆこう
わたしたちの
未来へ!!
ゆこう
輝く虹を
渡って!
ゆこう輝く
未来へ!!

ゆこう
わたしたちの
愛と勇気の
ある限り!!
そして
わたしたちは
―――、

扉を
くぐった
―――!!

希望という
未来へ
の扉を
―――!!

物語はいつも旅立ちで終わる。

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written in 2004.05.13, rewitten in 2005.04.27, 2005.05.03