愛の戦士ヘッドロココ 6
アクアーネ編は水の国・アクアーネの天使の王・イザカと悪魔の女王の妹・ローラの古い悲恋と、そして現在を軸に展開する。

ロココとマリア、それに神帝たちは旅を続けていた。ロココはマリアに返された羽根を再び彼女に贈る。マリアは女の子にプレゼントするならこんなもの、と講釈をはじめ、指輪がいいと締めくくる。マリアは婚約指輪が欲しい。しかしロココは、羽根をで指に括りつけようとする。
ロココのニブさ初心さ天然さが思う存分発揮されている。マリアからしてみればほんとうに欲しいのは、羽根ではないし指輪でもない。しかし、彼はそれに気づかない。逆にマリアもロココが (彼自身気づいていないかも知れない) 羽を贈る意味には気が付いていない。
ちなみにマリアが女の子にプレゼントするなら、で挙げていたものは
  • 輝くシルクのドレス
  • ためいきのダイヤのピアス
  • 愛らしいパールのネックレス
  • 指輪
である。マリアが普段つけているのはイヤリングなので、ピアスは空けていないと思われるのだが。そのイヤリングを贈った (Vol.5, p.101) カイザーはあっさりと無視されていることからも、やはり物質はどうでもいいことが伺える。
このシーンの前に2ページほど、ノアがルウシードから手紙とマザーの実をうけとるシーンがある。このシーンは、「ぴょんぴょん」掲載時にはなくて、単行本化のときの書き足しと思われる。
ロココたちは道の途中、水の国・アクアーネにたどり着く。アクアーネで悪魔に襲われそうになったところを天使の王子・イリカに助けられたロココたちは、イリカが悪魔の女王・シースが妹のアイカにかけた呪いをとくためにシースの妹であるローラの真珠を欲していることを知り、その取得に協力を申し出た。
一方のカイザーはアクアーネでの活動のために、お土産もってシースにご挨拶に伺う。女王は多少容姿に不自由であり、カイザーはちょっと残念であった。
シースネイラは筋肉質で大柄でごつい。この漫画のキャラクタとしてははじめて出てきたタイプである。 見慣れてくるとシースもけっこういい女っぷりに見えてくるから不思議である (わたしだけか?)。 カイザーが贈ったのはチョコパである。輝くシルクのドレスとかではない。 でもシースは喜んでいたが。
マリアは最初、自分が悪魔であることを隠すが、ローラから真珠を奪うため、「同じ悪魔同士」と単身でローラを懐柔しに向かう。しかし、ローラは半信半疑の上に、こっそりマリアをつけていたイザカの側近に悪魔であることがばれ、ロココたちもろとも、天使の宮殿の牢に捉えられる。
牢の中で王と話し合うことを提案するロココを、マリアは頑なになって否定する。そんな彼らの牢の前に、こっそりとイザカ王が現れる。 王は、自分とローラの関係を告げようとする。 そのとき、宮殿を爆発が襲う。カイザーの加勢を得たシースの軍勢が攻めてきたのである。ロココは、イザカにマリアとの間柄を説明し、感銘を受けたイザカは泣き崩れて自分の過去を告白する (この間、戦闘中)。それは、悪魔ローラと愛し合いつつも、周囲の説得にまけて天使と結婚した彼の歴史であった (だから戦闘中)。話を聞いたマリアは憤慨するが、ロココにたしなめられ、さらにイザカのふたりへの協力と反省した様子から態度をあらためる (たぶん、イザカの部下たちは必死に戦っている戦闘中)。そしてロココとマリアと神帝は、イザカたちに協力し悪魔から宮殿を守ろうとする。
すぐ脇で戦闘をやっているのに真剣な話を続けるイザカたちは凄い。このとき興味深いのは、偶然にイザカとローラの話を聞いてしまったイリカ (イザカの息子) のぽかーんとした顔が1コマあるところ。父親の昔の恋人が悪魔であり、しかもまだ彼女への思いを断ち切ってはいないという事実は息子としてはショックだろう。ましてイリカの亡き母は、ローラではない、天使の女だったのである。
戦いは加熱してゆく。マリアとイリカはシースに襲われてピンチになるが、ロココに助けられる。そのシースは、天使たちと裏切り者であるローラを殺すと宣言し、イザカ・ロココ・カイザーをアクアーネの水栓ある場所へとテレポートさせ、栓を抜いた。栓はブラックホールと繋がっており、栓から水が抜かれるとアクアーネの人びとは死んでしまう。
シースとの対戦でピンチのマリアを救いにいったのは、ロココとそしてカイザーである。ここでのふたりの行動は対照的だ。ロココはマリアとイリカを安全なところへ非難させ、カイザーはシースを殴って攻撃を止める。
ところで、栓近くでのイザカの台詞は「 (栓が) こんなところにあったのか」。知らなかったのかよ!
マリアはローラを助けようと宮廷の外へ移動をはじめていたためテレポートの難を逃れた。ただし、マリアが到着したときローラはすでに「死の歌」と呼ばれる歌で敵を攻撃し、自分の身を守っていたが。マリアの話によりシースの意図を理解したローラは、シースのいるイザカの宮殿へ向かい、マリアはロココのもとへ向かう。
ローラはシースと対峙し、栓を抜くという一歩間違えれば国民すべてを苦しめることになる手段に出た彼女を責める。さらに、ふたりの生い立ちを歌にしてシースを攻撃する。「二番目の王女は美しくって歌も上手くって、皆から愛されていた♪」 打ちひしがれたシースは、ローラに剣を向け切りつけようとするが、致命傷を与えることはできず、そのまま半壊した王宮へと倒れこみ、倒れこんだところで半壊した王宮がさらに壊れて落ちてきて……死んでしまう。
シースネイラも悪女だと思うが、このときのローラの歌もなかなかどうして、である。この歌の二番目の王女はローラその人自身のことを指す。 ところで、助けに来たマリアに振り返るローラはなかなかグラマラス。しかも、助けに着た側のマリアが「お強そうで必要なかったかも」というほどの迫力がある。姉のシースの台詞からは、普段のローラが大人しいことが推論されるが、普段おとなしいやつほど切れると怖いということか(ぉ)。ローラがシースに対して歌った歌も、結構怖いので、シースが好きだったというイザカはM属性だったのかも知れない。
ロココはマリアの助けを得て再び栓をすることに成功する。ローラはシースの死を宣言し、悪魔たちに「もう戦うことはない」と撤退を命じる。ローラとイザカは再会し、互いの愛を確かめる。ローラは、イザカにアイカの呪いをとくための真珠を手渡す。呪いと解こうとするイザカの傍をそっと離れる彼女に気づいたロココとマリアは、呪いを解くためには真珠のすべてのパワーが必要であり、真珠のパワーはローラのパワーの源であることを知る。つまり呪いがとけたときローラは死んでしまう。しかし、ローラはシースの呪いがアイカに対するものではなく自分に対するものであったと語り、もっと早くにシースの寂しさに気づいてやれればと反省し、しかしイザカのために死ねる喜びをかみしめる。ローラの身体が泡と化そうとしたそのとき、ロココとマリアの愛のパワーにより、軌跡が起こって彼女は復活した。
しかしローラも怖いばかりではない。慈悲深くそして健気な面もまた彼女なのである、というのがラストのエピソードだ。ところでローラの復活シーンは、長い長いドレスが水圧でめくれあがって脚が見えている。脚があったのか!
ローラとイザカの婚約パーティの日、これからは天使と悪魔が幸せに暮らすアクアーネをつくると語る両者の言葉を胸に、ロココたちは次界をめざして再び旅立った。
イザカとローラ、ローラとシース、さまざまな人間関係を児童漫画の枠内で上手くまとめてみせたこの話は名作である。天使側が男性で悪魔側が女性というイザカとローラは、ロココとマリアにオーバラップして見える。しかもふたりともがそれぞれに王族である。ロココとマリアの未来が、ほんの少し歯車が狂えばありえたかもしれない未来が、そこにはある。しかし、ロココとマリアの登場はイザカたちの人生を全体的にみればハッピーといえる方向へと導く。それこそが彼らがヒーロたる所以なのだろう。

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written in 2004.05.13, rewitten in 2005.04.24